AI用の処理装置(CPU,GPU等)

これまでは汎用計算向けのコンピュータの心臓部あるいは頭脳部と呼ばれてきたのは、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)であった。ところがAIの利用が広まる中で、世の中のデータ利用が爆発的に増え、この計算処理の主役が代わりつつある。AIの普及で、世界のAI計算量は5年で30万倍に拡大したそうだ。このペースでは、毎年およそ2倍の割合で増大していくという「ムーアの法則」によるCPUの性能向上だけでは到底支えられない。そこで注目されてきているのは、分野ごとに特化した演算処理装置である。利用範囲を限定することにより、そこでの効率を格段に上げていこうというものである。このような特定の用途向けに複数機能の回路を一つにまとめた集積回路はASIC(Application Specific Integrated Circuit、エイシック)と呼ばれる。このASICは種別として多様であるばかりでなく、開発の歴史も長い。しかしながら特定の用途向けに開発されるものであるため、一つの種類のASICが多量に出まわることは少なかった。しかしAI導入による爆発的な需要の増大によって、そのいくつかが特に注目されてきた。

その代表が「GPU(Graphics Processing Unit:画像処理演算装置)」と呼ばれる、画像の処理用に作られた専用チップである。画像処理を高速化するために一つの半導体の中に演算回路が数千個入っているものもある。前の項で「画像認識機能を使うものはAIと言ってよい」と述べたように、現在利用されているAIの多くが画像認識機能を使っているので、GPUが注目されるのは当然の流れといえる。しかしながら、AIに関する技術革新のうねりはあまりに大きく、汎用のGPUだけではもはやその進化に追いつかなくなりつつあり、さらに限定された特定の機能に特化したAIチップの開発も進められている。

さらに、AIの中で主流になっているのは学習機能を活用するAIであり、AIが大量のデータを「学習」するのに適した処理装置も開発されている。その代表が、グーグルが開発した機械学習に特化したASICであるTPU(Tensor Processing Unit)である。

また、AIが普及するとあらゆるモノがネットにつながるIoT(Internet of Things)の活用が進むと考えられている。そうなると「あらゆるモノ」に対応するために、利用環境に応じて電子機器の仕様を変える必要がある。そのため、演算回路を自由に書き換えられるFPGA(Field-Programmable Gate Array)と呼ばれる専用半導体の需要も高まると期待される。このFPGAも30年以上の歴史があり、特定の用途向けである点ではASICに似ているが、その違いはFPGAは英語が示すように、出荷後に現場(フィールド)で機能を設定・更新(プログラム)できる点にある。

このようにAI処理用の半導体を巡っては、巨大テック企業を中心に、相次ぎ自社開発に力が注がれている。自社の半導体があれば処理速度を上げるのか、セキュリティーを高めるのか、消費電力を減らすのか、自由に優先順位を決められる。サービスをより柔軟に進化させるには半導体も一体で開発するのが欠かせなくなってきている。

さらに電子回路の素材の開発も注目されている。現在の電子回路は半導体で構成されているが、これを低消費電力と高速処理に優れた光回路で塗り替える技術も開発されている。


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