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ディープフェイクを作る技術
科学される感性
ディープフェイクを作る技術
AIが得意とするディープラーニングを利用して偽物(フェイク)をつくることから、この名前が付けられた。ここでは「敵対的生成ネットワーク(GAN:Generative adversarial network)」と呼ばれる機械学習技術が使われる。やや不穏な印象を与える名前だが、このGANは生成モデルの一種で、「ジェネレーター(generator)」と「ディスクリミネーター(discriminator)」の2種類のAIを使って画像などの生成を行う。ジェネレーターは偽物を作ろうとするAIで、ディスクリミネーターはその偽物を見破るAIである。前者は生成側、後者は識別側と呼ばれる。生成側は識別側を欺こうと学習し、識別側はより正確に真偽を識別しようと学習する。2つのAIが偽物を作っては、見破る過程を繰り返すわけである。このように2つのネットワークが切磋琢磨して、相反した目的のもとに学習するのでこのように名付けられた。
ディープフェイクは人間を騙すだけでなく、機械も騙すようなものもある。例えば、元の画像に人間の目には見えないような小さな雑音を乗せる(スーパーインポーズする)ことによって、新たな画像を生成する。人間はこの二つは同じと認識する画像が、AIでは単に雑音が載っているのではなく、全く異なった画像であると認識させることができるものがある。こうすることによって、AIを使ったシステムが誤った判断をするよう仕向けるのに利用できる。このようなことは「第20章 人間の脳とAIのディープラーニングの仕組み」で紹介される「ニューラルネットワーク」が、画像をたくさんのピクセルに分解し、いくつかのピクセル情報を寄せ集めて小さな領域の特徴をつかんでいくプロセスを利用(悪用)すればできる。
科学される感性
脳科学は脳とそれが生み出す機能について研究する学問分野であるが、そこでは感性と物理的要素を結びつける研究もされている。その研究方法にはいくつかあるが、脳の中で伝えられる情報を何らかのセンサーや測定装置でとらえ、その情報を解読するのが代表的な方法の一つである。脳の情報としては、脳の血流、脳からの電気信号、ドーパミンなどの「第20章 人間の脳とAIのディープラーニングの仕組み」で取り上げるシナプスで情報伝達を介在する物質である神経伝達物質の量などがある。脳からの電気信号は頭皮や内部に電極を置くことによって測ることができるし、脳の血流は機能的磁気共鳴画像装置(fMRI:functional Magnetic Resonance Imaging) という一種のMRI(核磁気共鳴)などによって測ることができる。脳波を測定し高い精度でその客が好意を抱いた香りを判定できるヘルメット型のデバイスなどもある。これらがとらえた脳情報を解読することによって、例えば映像や音声を視聴したときの脳活動からその心境を推定したりする。
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